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MessageLeafで生まれた新しいコミュニケーション

はじめに

僕のブログを何度か訪れている方はもうご存知だと思いますが、はてなブログに移行したタイミングでMessageLeafというWebサービスを利用し始めました。
そう、画面をスクロールさせていくと終わりの方で右下からニョキッと飛び出してくる、黄緑色のアイツです。


MessageLeafは簡単に言うと、読者からブログのオーナーに直接非公開のメッセージを送信できるサービスです。
ブログのコメント欄に書き込むとみんなに見られてしまうので、書き込みに躊躇する人も多いと思います。
しかし、MessageLeafで送るメッセージは非公開なので、ちょっとした感想や少しプライベートな相談事まで他人の目を気にすることなく送信できるのです。


MessageLeafについては以前書いたエントリーでもう少し詳しく紹介しているので、もっと知りたい方は参考にしてみてください。


ところで、MessageLeafは非公開であるがゆえに、他の人がどんなメッセージを送っているのかわかりません。
あの黄緑色のガジェットの中で、僕と読者の方がどんなふうに言葉のキャッチボールをしているのかは誰にも見えないわけです。


でも、ちゃんとコミュニケーションは生まれています。
特に先日公開した「ソフトウェア開発プロセス残酷物語」はかなりのアクセス数があったので、僕のもとに届いたリーフの数も一気に増えました。


リーフが届くとそれだけでブログのオーナーはうれしいものですが、今回はその中でも特に良いコミュニケーションができたなあと思うリーフのやりとりを2件、特別に公開します。もちろん、リーフの送り主には了承を頂いています。(どうもありがとうございました!)


ちなみに今から紹介するリーフは、頂いたリーフの中でもかなり長めのやりとりです。
すべてがこんなに長いわけではなく、ぽつりと一言だけ感想を送ってくれるような方もいるので、念のため。


偉い人がチケット駆動開発のルールを守ってくれません (Aさん)

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[Aさん]
いつも為になる記事をありがとうございます。


私が在籍している会社は、2年くらい前にRedmineを導入してチケット駆動開発を始めたのですが、偉い人がそのルールを守らずにチケット無しコミットを連発しており、「みんながルールを守ればエンジニアが楽出来るのに何故やらないのかなぁ。むしろ偉い人が率先してやるべきだろう!」と悶々とした日を過ごしていました。


でも、その考えがダメって事もあるんですね。


個人個人がが気づかなきゃ何も変わらないというか、共通意識を持った人を集めないとダメというか・・・


うーん、難しい問題ですね。


ジェイソンのその後の物語を楽しみにしております!

[僕]
リーフどうもありがとうございます!
何かのお役に立っているのであれば僕も嬉しいです。


>偉い人がそのルールを守らずにチケット無しコミットを連発しており
>でも、その考えがダメって事もあるんですね。


これはちょっとやや複雑ですね。
マネージメント的な問題というよりむしろ現場の問題であり、プログラマ/エンジニアの問題でもあるので、ぱっと聞くと「その偉い人はルールを守るべきなんじゃないか?」というのが第一印象です。


しかし、まずはその人を交えて、なぜルールを守らないのかを尋ねたり、チケット駆動開発のメリットやデメリットに関する共通認識を現場の人間全員で合わせたり、そういう取り組みが必要になりそうですね。


もうやってるのかな?
その方が単に頑固なだけだと厄介ですが・・・。
まあ、人間誰もが「自分は正しい」って思いたいと考えているので、プライドを傷つけないようにうまく誘導してあげる必要があるんじゃないでしょうか。


すいません、細かい背景が分からないので、想像で書いていってます(^^;


>ジェイソンのその後の物語を楽しみにしております!


そうですね、数年後にまた続編が出てくるかもです!w

[Aさん]
素早い返信、ありがとうございます。


もう少し細かい背景を書くと、ルールを守らない偉い人は2人(1人は40代前半、もう一人は50手前)いて、どちらも社歴が10年以上ある古株社員なんです。


これがまぁ頑固で、何回か休憩時間とかにキツい言い方にならない程度に言ったりはしたんですが「忙しいから今は無理!」みたいな感じでした。


その結果、自分で行った修正内容忘れたりデグレ起こしたりしてるんですが、古株社員なので誰も強く言えないって感じです・・・


そんな事でストレス溜めても仕方ないんで、チケット駆動開発は良い物なんで俺らだけでもしっかりやって行こう!っていう反面教師になってるから良いのかなと思って今は日々の開発を行なっています。


グチっぽくなってしまいましたが、長文の返信を頂いて嬉しかったのでこちらも色々書いてしまいました。


では、これからも更新楽しみにしています。

[僕]
なるほど〜、それは厄介なパターンですねえ。


>そんな事でストレス溜めても仕方ないんで、チケット駆動開発は良い物なんで俺らだけでもしっかりやって行こう!


波風立てずにやってくなら、それが順当かもしれませんね。


でもまあ、個人的な感想で言うと、そういう状況は許せないんで、ぎゃふんと言わせてやりたいです。
そのためには職場の権威になることかな、と思います。
職位上は下でも、「あのxxさんが言うなら正しいだろう」というぐらいの高い技術力や周りからの信頼を得れば、色々と状況が変わってくる気がします。
それでもダメで、楽しくない状況が続くなら、高い技術力を武器に、えいっと転職しちゃえばいいです。


僕も前職では言うべき時は上の人にもガツンと言ってましたし、倉貫さんもそうだったみたいです。
そんなわけで、自分を鍛えられるところまで鍛えて、いつかぎゃふんと言わせてみてほしいな〜、というのがもう一つの回答です。


Good Luck!

[Aさん]
>自分を鍛えられるところまで鍛えて、
>いつかぎゃふんと言わせてみてほしいな〜


そうですね。
今の会社で発言力を付けるにしても、転職するにしても必要な事なので、まずは技術力を更に高めようと思います。


明日からの仕事の励みにしたいと思います。
どうもありがとうございました!


MessageLeafって、作者の方と記事の内容について深い話が出来るし、良いサービスですね!

 

アジャイル開発の考え方/プラクティスを導入したいのですが (Bさん)

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[Bさん]
はじめまして。
鉄道事業の情報システムグループ会社でSEをしているBと申します。


会社では「さて、それから数年の月日が経ちました」の前段までを実施しようとしているところです。
社内にはすでに開発標準(WFのみ)は存在するのですが、標準があるがゆえに自分たちで考えることをせず成長しない組織となってしまっています。
これではマズイということで、アジャイル開発の考え方/プラクティスを取り込んで「自分たちで考える」ように組織を変えようと考えています。


この記事の結びにある、「少数精鋭の~」については非常に同意なのですが、かといって大企業はオワコン!ベンチャー行こうぜ!!というわけにもいかず。。。
会社が大きければ出来る人/出来ない人がいるわけですが、ダメな人達を規約で標準に近づけようとする今までの流れよりも(結局できてないわけですが)、
出来る人と裁量権をある程度持った小さなチームを組ませて、一緒に働くことで少なくとも並にまで引き上げる、というのがこれから大事なのかなと考えています。
※「鉄道事業」のグループなので、システムを作りたい人より鉄道に携わりたいという理由だけで入社する人が多く、エンジニアに向かない人が多い状況です。
そういう人達をいかに並~良いエンジニアにするかに頭を悩ませています。自分の中では、アジャイルでやれば"ある程度"達成できると考えているのですが


イトウさんはソニックガーデンに入社して全く別の働き方を知ったとのことですが、それによって前職でこんなこと出来たかも!みたいな逆の発想はありましたか?

[僕]
どうもリーフありがとうございます!


>前職でこんなこと出来たかも!みたいな逆の発想はありましたか?


そうですね、ソニックガーデンでやってる開発スタイルをそのまま取り込めばいいじゃん、と思ったりはしますね。
というのも、前職は社内SEなので、人件費的にはある意味「月額定額」状態だったので、やろうと思えばソニックガーデン流を導入できたんじゃないかと思っています。


>会社が大きければ出来る人/出来ない人がいる


それであれば、全体の底上げを狙うのではなく、できる人 or やる気のある人に火を焚き付けてあげるのが良いかもしれません。


>イトウさんはソニックガーデンに入社して全く別の働き方を知った


本当にソニックガーデンの開発スタイルに興味があるなら、入社しなくてもソニックガーデンの教育プログラムを使って、体験することができます。
そうすれば、Bさんの求める「逆転の発想」は僕じゃなくても、Bさんのチームメンバー自身が考えることができるわけです。


あくまで「例えば」のシナリオですが、「やる気や素質のあるメンバー数人をソニックガーデンの教育プログラムに送り込む → アジャイル開発の面白さや合理性に開眼させる(火を焚き付ける!) → 会社に戻って彼らをリーダーにしたチームをいくつか作る → リーダーの自発的なマネージメントによって自己管理的なチームを作り上げる」なんていうシナリオはどうでしょうか?
当然ここではプロセスは全く使用しません。やる気のあるメンバーの自主性にすべて任せます。Matz先生も「生産性を発揮させるのに有効なのは強制ではなく自由です」とおっしゃっていますし。


Bさんのコンテキストがよくわからないので、こちらの勝手な想像でアイデアを考えてみました。
全く参考にならない意見だったらすみません(^^;

[僕]
追伸
もし、アジャイルに活路を見出そうとしているなら、本や座学の知識だけで導入するのは失敗する可能性が高いです。
一番良いのはよく分かっている人と一緒に実際やってみることです。
その辺の話は以前僕のブログで書きました。


http://junichiito.hateblo.jp/entry/20120623/1340402538
>結局のところ、本を読むだけでは「知識」が得られるだけで、「経験」は得られません。
よって「技芸」を習得したことにはなりません。
「問題発生!こんなときどうする?」という場面で、さっと解決策を編み出せるか、はたまた右往左往して貴重な時間を食いつぶしてしまうのかは経験の有無が大きな差を生みます。


http://junichiito.hateblo.jp/entry/20120625/1340632693
>つまり、達人と実際に出会い、達人と深い関わりを持つことが、達人の技芸を継承する最も有力な方法だと僕は考えます。


そして、それを学んだとしても現場に持ち帰ってみると、その場その場で新しい課題や制約が発生するので勉強した通りには進むことはありません。
なので、アジャイル開発を習得して持ち帰るメンバーは自分の頭で解決策を考えることができる人間である必要があると思います。

[Bさん]
役職関係なくやる気のある人を集めて、ソニックガーデンさんの研修プログラムはイイですね。個人的には若い子たちに外の世界を教えてあげたいです。
外のスーパーな人たちを知ることによって世界が変わる人もいると思うので。その結果、優秀になって転職してしまうのかもしれませんが・・・
自分もアジャイルがきっかけで外に目を向けるようになり、色んな人と話をすることで世界が変わりました。きっかけを与えて外の世界と社内を繋ぐ機会が増やせれば、もしかしたら空気は変わるかも、とふと思いました。アジャイル関係なく。
※そういえばAgile Japan Tokyoサテライトで倉貫さんが、「脳のブレーキを壊す」というのを話してたなー。今さら思い出した


アジャイル開発をやる際には、アジャイルコーチに支援をお願いしたいと思ってます。上の人達がOKするかは分かりませんが、自分たちで勉強しただけでは「絶対に失敗する」は伝えようと思っています。プラス、ビジネス・アジリティを落としてまで自分たちだけで実施することにこだわるんですか?って話ですね
「生産性を発揮させるのに有効なのは強制ではなく自由です」「ソフトウェア開発は製造業ではなくサービス業」この2つは非常に心に刺さったので今後使っていきたいと思います。
結局、ツールやプロセスよりも個人であり、個人の想い!大企業にいるとそこが忘れがちになってしまうので気をつけます。


多くの気づきがありました!良いエントリーありがとうございましたm(_ _)m


P.S.
MessageLeafも最初は邪魔だなーと思っていたのですが、使ってみるとすごくイイですね。コメント欄より気軽に書けるのが素晴らしいです。
ただ難しいなーと思うのは、ブログの内容にあまり惹かれなかった時に、ニョキっとでてくるとちょっとだけイラっとしてしまうので、記事内容の良し悪しでリーフ自体の印象が変わってしまうところでしょうか。この感覚は自分だけかもしれませんが

 

MessageLeafを導入してみて

おそらくこういうやりとりをコメント欄で繰り広げるのは、他人の目が気になって無理だと思います。
わざわざメールを送信するのもハードルが高いですよね。そもそも僕はメールアドレスを公開していませんし。
Twitterも相互フォローになってないとDMでやりとりできない上に、字数の制限もあります。
やはり、MessageLeafがなかったらこのようなコミュニケーションは生まれていなかったと思います。


あと、読者の方から何気に質問をいただくと、ブログのオーナーにも新しい発想が生まれたりします。
今回のやりとりでも、僕は別にこういう考えを前から持っていたわけではなく、「どう答えようかな〜?」と思っているときに、頭の上でピカッと電球が光って生まれた回答です。
そうそう、前回のエントリ「良いプログラマの定義」も、リーフをもらって考えた回答が元ネタになっています。


MessageLeafの公式サイトを見ると「新しい双方向コミュニケーションが重ねられ、それが次の素晴らしいコンテンツを生み出す」というビジョンが書かれていますが、まさにその通りな感じです。


でも、それは・・・わかってます

ところで、ここまで読んでくれた読者の何割かの人は、きっと心の中でこう思っているはずです。


「でもな、でもな、でもな・・・ウザいねん、アレ!」


はい、ちょっと自己主張が強すぎるガジェットの振る舞いが、一部の読者の方に不快感を与えていることは開発チームでも認識しています。(先ほどのBさんも最後に言及していますね)
現在、改善に向けて開発チームが頑張っておりますので、もうしばらくお待ちくださいませ m(_ _)m


あともうひとつ残念なところ

MessageLeafのもう一つ残念なところは、必ずしもすべてのブログで設置できないことです。
設置の際にはJavaScriptをページのどこかに埋め込む必要があるのですが、scriptタグを禁止しているブログサイトが結構あります。
僕が以前利用していたはてなダイアリーもそうですし、僕の妻が利用しているExciteブログもそうです。


先日、妻が僕に「私のブログにも付けられる?」って聞いてきたのですが、調べてみたらExciteブログはNGでした。
女性って「手紙好き」な人が多いので、女性向けのブログサイトに置けばきっと利用する人は多いんじゃないかな〜と思うのですが、ちょっと残念です。
技術上の制約から今のところブログサイトを変える以外方法がないのです。(><)


おわりに

最後はちょっと今後の課題も挙げましたが、それでもMessageLeafはこれまでになかった新しいコミュニケーションツールだと思います。
はてなブックマークやツイッターのコメントとは違って、好意的な意見が大半である点もブログオーナーとしてはうれしいところです。
今後もいいやりとりが生まれたら、公開するかもしれません。


MessageLeafについて興味を持った方は、ぜひ公式サイトを訪れてみてください。